不良真空管の実態 その1 (Ut-6B7と6GA4の例)2023/12/29

 最近,在庫真空管の整理のために多数の真空管をチェックしました.オークションなどでは,未検査の真空管が出回っているようですし,明らかにリークしてゲッターが真っ白になっている真空管を挿してあるアンプのスイッチを入れ,「煙と匂いがトランスからした」などという怖い話も出ているようです.
 私の在庫は,見た目は検査してあるものが中心ですが,「不良真空管の実態」を記録しておくのも意味があるかと思いました.今日はUt-6B7(写真上)と6GA4(写真下)の例を紹介します.
6B7と6GA4
 両者とも東芝(マツダ)製ですが,製造年代が随分違います.Ut-6B7はベースに名称が刻印されており,同ストックには昭和19年のシールが貼られており,これもおそらく戦争末期の製品です(Ut-6B7は陸軍の無線機にも使われていたようです.).さて,この真空管の不良はどんな症状でしょう.
みなさん,想像して見てください.ハイ,当たりです.ヒーターの断線でした.戦況の悪化により,金属材料Wが不足し,しかも,ベテラン工員ではなく,女学生が真空管を作っていた時勢です.仕方がないですね.この頃に作られた川西機械製の5極送信管E510を7本ほど検査したことがありますが,使用に耐えるのはわずか2本でした.それらは今も大事に持っています.
 写真下の6GA4, これはどうでしょう.このタイプは6BX7の片側を元に東芝がオーディオ用に開発した日本独自の防熱型3極管で,2A3の改良型などと称されたこともあります.実際は,2次歪が2A3より多い印象ですが,音は良かったと記憶しています.今回,新品と中古合わせて10本を検査しました.さて,不合格は何本だったでしょう?答えは1本です.しかも,箱入新品のものが不合格でした.
ヒーターはOK,自己バイアスで,プレート電圧を上げていっても,プレート電流が全く流れません.
真空管内部は丸見えで,構造は肉眼で確認できますが,異常無しです.ゲッターの様子から見て,プレート電流が流れないほど真空度が悪いようにも見えません.こういう場合は,経験上,ピンのハンダ付け不良です.即,再ハンダを行いました.結果は,ダメでした.謎ですね.不燃ごみのゴミ箱行きとなりました.
 これから,こういった「不良真空管の実態」を書いてみたいと思っています.