Zorki-3M シャッター速度 修理・改造2013/03/24

Zorki-3Mの修理・改造に熱中して、ブログの更新がおろそかになっていました。
ということで今日のテーマは主テーマからハズレてZorki-3Mのシャッター速度調整です。
Zorki-3M(下の写真)は、低速まで1軸シャッターで、ファインダーも一つで張り合わせミラー、視野も明るくお気に入りのカメラの一つです。ただし、機構的には極めて問題の多いカメラで、「正常動作しているものは無い」のではと思います。その最たるものが露光の不均一です。1/100でも1/250でも必ず写真の右側が暗く(露出不足)、左側が明るく(露出過剰)なります。(念のため、幕の左右と写真の左右は逆です。)これも含めて「Zorki-3Mの味だ」とおっしゃる方もいらっしゃるくらいです。これは設計に問題があるためで、ソビエトカメラによくある製造上の問題ではありません。
Zorki-3M
 まず、オリジナルの状態でのシャッター速度の測定結果を示します。表の見方は以前のCanon-Pと同様です。数値の単位ですが、0.1msです。具体的には、例えば17は1,7ミリ秒、123は12.3ミリ秒のことです。一つの欄に複数個の数値が並んでいるのは、同条件で複数回計測した結果です。
Zorki-3M改造前
この個体の場合、1/500では右と左で実に2倍以上も露光時間が違うわけです。「いや〜、これはよっぽど調子の悪い個体だろう」とおっしゃると思いますが、実は典型的な1台です。私の調べた6台(他にZorki-3が1台、Zorki-3Sが1台)全て同様です。ここまで、同じようだと設計自体に問題があるに違いありません。
 公称シャッター速度に近いのは走り出し(右)ではなく終わり(左)だけです。実のところ先幕の初速度が遅いために、このようにしかならないのです。先幕が動く時には、先幕スプリングシャフト、ドラムの主軸、シャッタースピード調整ディスク、蹴飛ばし金具、高速ダイアル、ドラム下のギヤー、アイドルギヤー、スプロケットシャフトとそのギヤーなど多くの部品が動きます。それらの慣性モーメントの合計は、後幕に比べて大きく、さらに摩擦によって減速され(力のモーメントが差し引かれ)、先幕の初速度を思うように上げるのは困難です。(初速度は、いわゆる撃力のモーメントによって与えられると考えてください。)この状況は、先幕のスプリングを強くしてもさほど変わりません。このように、走り出しにおけるシャッター速度は、先幕の初速度によって決まると言ってよいでしょう。従って、露光を均一にしようとすれば、走り出しの速度(右の速度)に左を合わせるしかありません。(Canon IIIやLeica IIICなどは、スムーズにシャッター幕が動き、摩擦が小さいです。さらに、特別な機構があるので1/1000が可能なんですね。)
 ところで、Zorki-3Mでは、何故、右に比べて左は露光時間が短いのでしょうか。それは、先幕も後幕も概ね等加速度運動するからです。すなわち、両幕とも、「走り出し」よりも終わりでは高速度で運動し、しかも、その間隔は、一定です。ですから、右に比べて左は露光時間が短いのです。等加速度運動が避けがたいとすれば、始めは間隔を狭く、終わりで広くするのが良さそうです。しかし、Zorki-3Mでは、ドラムに刺さっている棒(eooentrio)の穴が円形で、幕間隔は終止一定にされています。
 他のバルナック型では、この穴が半月状になっていることがあります。(下の写真)このような形の場合、先幕に対して後幕が遅れる事が可能です。特に後幕のスプリングを弱めに設定すれば、後になるほど幕間隔を広げることが可能です。(先幕を長くして、先幕のスプリングシャフトを実質的に太くすることも有効です。)そこで、Zorki-3Mのドラムの穴も下の写真のように長く広げてみました。
Zorki-3Mドラム改造
 結果を次に示します。シャッター速度の均一性が劇的に向上しています。シャッター速度は、全体的に公称よりも遅いですが、均一な露光は好ましいです。ただ、これでZorki-3Mの味の一つが失われたのかもしれません。(ここまで調整するには大変な手間がかかります。ドラム上の後幕位置を0.5mm精度で調整する必要があります。要するに、貼ったり外したりを繰り返して調整しました。もちろん、先幕と後幕スプリングシャフト、ドラム、アイドルギアーの軸なども解体、必要に応じてサイズ調整、清掃、注油しました。)
 なお、Zorki-3Mでは1/25以下でスロータイマーを使います。特に1/25の調整は極めて微妙で、ギヤーの山一つ違いで速すぎたり遅すぎたりします。ということで、この程度でがまんする事にします。
Zorki-3M改造後
 この改造に関する皆さんのご意見をお待ちします。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
16ミリカメラのフィルム幅はなんミリ?
(半角数字で十六を入力)

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://colorkonan16.asablo.jp/blog/2013/03/24/6757252/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。